研究課題/領域番号 |
21K20615
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉山 彰 新潟大学, 医歯学総合研究科, 助教 (10908437)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 浮腫 / 胎児 / 疾患モデル / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
胎児浮腫は妊娠初期に約1%の頻度で認められる超音波所見であるが、多くの臨床症例で原因、発症機序や疾患リスクなどの予後は不明である。胎児浮腫の新たな原因遺伝子を同定するために化学変異原ENU(N-ethyl-N-nitrosourea)誘発遺伝子突然変異マウスを用いた胎仔期表現型スクリーニングを実施し、13個体の浮腫を示す胎仔が確認されていた。これらの胎仔から抽出したゲノムDNAについてエクソーム解析を行い、多数の遺伝子変異を検出していた。2021年度は以下の手順により、検出した遺伝子変異を胎児浮腫との関連性が高いと予想されるものに絞り込み、胎児浮腫の候補遺伝子を見出した。検出した遺伝子変異の中から、終止コドン形成およびアミノ酸置換を引き起こす一塩基置換に着目し、アミノ酸置換を引き起こす変異についてはPolyPhen-2などのソフトウェアを用いてタンパク質機能への影響の大きさを評価した。次に候補遺伝子が胎児浮腫の原因となっていることを証明するためにGONAD(genome-editing via oviductal nucleic acids delivery)法による遺伝子改変マウス作製系を研究室内で立ち上げた。GONAD法は自然交配させた雌マウスの卵管にCRISPR/Cas9試薬(ガイドRNAやCas9タンパク質)を注入し、その卵管内で電気穿孔法を実施する効率的な遺伝子改変マウス作製技術である。候補遺伝子の一部についてノックアウトマウスの作製を行い、胎生15.5日目における胎仔浮腫の有無について評価を行った。その結果、2遺伝子について浮腫を示す遺伝子ノックアウトマウス胎仔を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は研究実施計画で示した通り、遺伝子変異マウス作製と胎仔期表現型解析による胎児浮腫の原因遺伝子探索に着手し、一部の候補遺伝子については胎児浮腫の原因遺伝子であることを示唆するデータが得られている。以上より、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度で胎児浮腫との関連が示唆された遺伝子については、ノックアウトマウスの系統樹立を行い、胎児浮腫の原因とされるリンパ管形成異常や心奇形、血管透過性亢進の有無を評価し、遺伝子変異と病態を関連付ける。さらに成体における浮腫の有無などの予後の解析を行う。他の候補遺伝子についても同様の検討を行い、胎児浮腫の原因遺伝子の同定と予後について新たな知見を得るためのマウスモデル研究基盤を確立する。
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