胎児浮腫は妊娠初期に約1%の頻度で認められる超音波所見であるが、多くの臨床症例で原因、発症機序や疾患リスクなどの予後は不明である。2021年度は胎児浮腫の候補遺伝子を見出し、候補遺伝子の一部についてノックアウトマウスの作製を行った結果、2遺伝子について浮腫を示す遺伝子ノックアウトマウス胎仔を確認した。 2022年度ではさらに1遺伝子を胎児浮腫と関連を示す遺伝子として同定し、ノックアウトマウス系統を樹立した。背部皮膚フラットマウント標本の免疫組織化学染色により、各遺伝子のノックアウトマウス胎仔において皮膚リンパ管形態異常(リンパ管の拡張や分岐数の減少など)が認められた。さらに3遺伝子のうち1遺伝子については、培養ヒトリンパ管内皮細胞においてsmall interfering RNAで遺伝子の発現を抑制すると、リンパ管内皮細胞の生存・遊走に中心的な役割を果たすvascular endothelial growth factor (VEGF)-Cの受容体であるVEGFR3の遺伝子発現低下と生細胞数の低下が認められた。 本研究で見出した遺伝子のノックアウトマウス胎仔においてリンパ管形成異常を介した浮腫が誘発され、胎児浮腫の原因遺伝子である可能性が示された。
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