研究課題/領域番号 |
21K20690
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 紗希帆 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50913521)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / ペランパネル / てんかん / AMPA / 神経興奮 |
研究実績の概要 |
本研究は、抗てんかん薬として現在臨床の場で使用されている非拮抗型AMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)拮抗薬ペランパネル(PER)をβアミロイド蛋白(Aβ) 沈着前のアルツハイマー病(AD) モデルマウスに投与し、神経過剰興奮の抑制を介したAD 病理および認知機能障害への効果を検証する目的で実施している。これまでの研究で、若齢ADモデルマウスにおいて、PER 単回経口投与がbrain in vivo microdialysis の手法を用いて収集した海馬間質液中のAβ値を有意に減少させることを示した。2021年度はPER(または溶媒)単回経口投与後に海馬組織のAβ前駆物質(APP)切断に与するタンパク質を生化学的に解析した。また、γセクレターゼ阻害薬投与下でPER(または溶媒)を行い、海馬間質液中のAβ値の推移を解析しAβ の海馬間質液からの半減期を求めた。結果、PER の単回投与はAβのクリアランスを変化させることなくAPPのβ切断を低下させた。また、脳皮質シナプトソーム分画においてAMPAR サブユニットであるGluA1 およびGluA2 を生化学的に定量した。PER 単回投与後にシナプトソーム分画のGluA1およびGluA2 値は変化せず、シナプスでのAMPAR のダウンレギュレーションが起こらないことを確認した。2021年度後半より若齢ADモデルマウスへのPER 長期投与とPER 血中濃度モニタリングを開始した。 この研究は既存薬であるPER を用い、AMPAR 阻害がAβ 産生を低下させることでAD の病態を改善させる可能性があるという新たな知見を得た点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に実施予定であったアルツハイマー病モデルマウスにおけるPER 単回投与の海馬Aβ 病理に対する有効性とその機序の解明に関する一連の実験は終了し、論文投稿準備中である。2021年度後半より行っている若齢ADモデルマウスへのPER 長期投与では、理論上は浸透圧ポンプによる投与で十分な血中濃度を得られる想定だったが、実際には投与チューブの詰まりなど予期せぬ要因により十分な投与効果を得られなかった。現在代替法で投与を行い、血中濃度測定による最適化を行っている。次年度は予定通り長期投与実験を継続するため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後PER の長期投与がAD モデルマウスの認知機能やAβ 病理、およびAMPAR サブユニットの分布にどのような影響を与えるかについて明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度後半より行っている若齢ADモデルマウスへのPER 長期投与では、理論上は浸透圧ポンプによる投与で十分な血中濃度を得られる想定だったが、実際には投与チューブの詰まりなど予期せぬ要因により十分な投与効果を得られなかった。そのため当初予定していた浸透圧ポンプ等の消耗品について追加購入を行わなかった。現在代替の方法による投与最適化を行っており、次年度は予定通り長期投与実験を継続する。
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