研究課題
研究活動スタート支援
膵癌の浸潤の機序として、我々は過去に膵癌の先進部では細胞の腺房-導管異形成(ADM)様変化を認め、それが腫瘍浸潤に関わることを報告した。本研究ではその機序を検討し、ADM様変化のある腫瘍先進部では血管新生密度が高く、これが予後低下と相関することを明らかにした。さらに膵癌組織全体のうちADM様変化のある腫瘍先進部においてのみ、腫瘍関連マクロファージの増加を認め、この部位でMMP9が発現し、それが血管新生密度の高い部位と一致することを明らかにした。
医歯薬学
膵臓は周囲を主要な血管や他臓器に囲まれた臓器である。そのため、膵癌の唯一の根治治療は外科的切除であるが、半数以上の症例は診断時にすでに遠隔転移や局所進行のために切除の対象とはならず、膵癌は予後不良な疾患である。本研究では、膵癌の浸潤に際して腺房細胞のADM様変化が生じる部位の周囲微小環境において、腫瘍関連マクロファージがMMP9という分子を発現することが、血管新生増生に関与し、ひいては浸潤に関与する可能性を示唆した。このことは、膵癌の浸潤機序の解明の一助となる非常に意義のある結果である。