本研究は、先行研究において血液透析患者のセルフケア能力と関連があると明らかとなった「患者が自分自身の今後について持つ予測」つまり「見通し」について、患者がどのようにして見通しを持つのか質的記述的に明らかにすることを目的とした。 維持血液透析を実施している医療機関にて、6名の血液透析患者に半構造化面接を行った。分析方法として、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。 結果、【“透析をして生きていく“ために“今”に集中する】、【身体の実感や血液データを頼りにトライアンドエラーを繰り返しながら小さな見通しを積み重ねる】、【“透析治療を受ける”という現実が不安な未来を見通させる】の3つのカテゴリー、≪生きるために、つきまとう不安な未来ではなく“今”に集中する≫、≪透析をして生きていくことを容認した≫、≪透析治療に自己参加しているという認識を持つ≫、≪透析をして生きていくことが受け入れ切れず、見通しが持てない≫、≪身体の辛さから逃れるために見通しの獲得を目指した≫、≪トライアンドエラーを繰り返して自分なりの小さな見通しを積み重ねていく≫≪血液データで答え合わせをする≫≪身体の実感を伴った効果が見通しを確かなものにしていく≫≪情報源の少なさから見通しは身近なものに留まる≫、≪周囲の人が見通しを持つきっかけや指標となる≫、≪“自己管理ができず透析治療に至ってしまった”やるせなさが未来への前向きな見通しを邪魔する≫≪“治らない・一生続けなければならない”という透析治療の現実から不安な未来を見通さざるを得ない≫の13の概念が生成された。 血液透析患者の見通しは情報源の少なさから身近なものにとどまっていた。看護師は、患者が理解しやすい情報の提供や他の透析患者と関わることのできる場の提供などを行う必要があることが示唆された。
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