研究課題
Scx遺伝子の下流に新たに同定された組織特異的発現制御を担うenhancer領域をminimal promoterを有するpGL4.23ベクターに組み込み、Scxを発現する未分化ATDC5細胞においてdual luciferase assayを行った。伸展刺激を与えると、非刺激の条件と比較して、有意に転写活性が上昇していた。刺激6時間後には、ATDC5細胞におけるScxの遺伝子発現も上昇していた。力学刺激による応答性を解析する実験では、腱形成不全となり脱負荷が起こるScx欠失マウスを用いることにした。野生型では、線維軟骨形成過程で、Scx+/Sox9+細胞、Scx+/Sox9+/Gli1+細胞、Scx+/Gli1+細胞が一過性に出現し、石灰化線維軟骨の成熟に伴いWntシグナルのアンタゴニストであるSclerostinが発現するようになるが、Scx欠失マウスでは、脱負荷による線維軟骨形成不全によってこれらの細胞がほぼ消失していた。また、アキレス腱付着部の硬さが亢進するSost欠失マウスのエンテーシスの非固定非脱灰凍結切片を用いて、原子間力顕微鏡よる解析を行ったところ、生後120日のSost欠失マウスでは、石灰化・非石灰化線維軟骨の硬さが亢進していることが判明した。前年度に引き続き、RNA Seqデータなどを活用したメカノセンシングに関わる遺伝子の絞り込みも行っている。研究の進捗に関しては、Zoomを用いたミーティングを定期的に実施し、2023年8月下旬から9月上旬にかけて、研究代表者と研究分担者2名が共同研究先であるヴュルツブルク大学を訪問した。
2: おおむね順調に進展している
本研究で目指している力学刺激に応答する腱・靱帯特異的な発現制御を行うenhancer領域の同定に向けて、Scleraxisでの解析が進展した。付着部であるエンテーシスの成熟軟骨細胞の分子マーカーであるSclerostinを同定し、脱負荷モデルにおいては、その発現がほぼ消失することも明らかにした。コロナ禍においては、ドイツとの交流は、Zoomによるミーティングに限られていたが、本年度は、研究代表者と研究分担者2人が共同研究先のヴュルツブルク大学を訪問し、今後の共同研究の遂行や論文公表に向けて議論を深めることが出来た。
2024年度には、コロナ禍のために遅れていた共同研究先のヴュルツブルク大学での実験を実施するだけでなく、論文公表に向けた成果発表に向けた準備を進める。渡航費用が高騰しているために、複数回の滞在は難しいが、双方で事前の準備を綿密に行い、力学刺激に応答するennhancerの特性解析、顎関節と膝関節の形態解析、オルガノイドモデル構築に向けた準備を進める。
2021年度と2022年度に、コロナ禍のため、当初、予定していた渡独を実施することが出来なかったために生じた未使用額を2023年度中に使用することが出来なかったために、次年度使用額が生じた。2024年度以降の渡航滞在費と実験の消耗品として使用する予定である。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Frontiers in Cell and Dev Biol
巻: 12 ページ: in press
10.3389/fcell.2024.1360041
https://www.koenig-ludwig-haus.de/aktuelles/presse/23764.Gaestebesuch-und-Seminar-Prof.-Shukunami--Universitaet-Hiroshima--Japan.html
http://tnmd.hiroshima-u.ac.jp/j_html/j_gyouseki.html