研究課題/領域番号 |
22246092
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 豊 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10260415)
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研究分担者 |
竹田 陽一 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40374970)
及川 勝成 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70356608)
阿部 博志 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (30540695)
宮崎 孝道 東北大学, 大学院・工学研究科, 技術職員 (20422090)
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キーワード | 応力腐食割れ / 発生過程 / 視覚化 / 発色反応 / 電気化学的過渡信号 / 介在物 / き裂停留 / δフェライト |
研究概要 |
1.応力腐食割れ発生過程ですべり溶解により生成するFe^<2+>イオンを発色反応によって視覚化し、着色位置によって割れ萌芽の発生位置を、電気化学計測の併用によって反応規模(反応に関与した電荷)を定量評価する試験方法を採用して、応力腐食割れ発生機構解明のための現象観測・分析を行った。下記の成果が得られた。 (1-1)損傷局在化の材料側要因の検討:グロー放電スパッタリングにより供試材の介在物の特徴(組成・サイズ・位置等)を明らかにした上で、鋭敏化SUS316+チオ硫酸ナトリウム水溶液の系において、SCC発生過程を視覚化情報・腐食電位同時観測手法により観測し、起点の介在物の特徴を調査した。事前観察画像と視覚化画像の比較により、SCC起点は粒界上に位置する3μm程度の介在物であることが分かった。EDX分析の結果、き裂の起点となった介在物の痕跡にはMg・Al・Siの濃縮が確認された。 (1-2)高温水環境への適用性検討:高温水中でのFe^<2+>イオンとフェナントロリンの発色反応の評価に基づいて、発色反応を利用した割れ発生視覚化手法の200℃台高温水中での適用性を検討した。200℃では鮮明な発色が得られ、フェナントロリンおよびフェナントロリン鉄錯体の化学的安定性が維持されているものと判断された。250℃では、発色の強さが低下した。 2.対策材の提案とその実証については、下記の成果を得た。 SUS316ステンレス鋼をベースとし、誘導加熱試験機を用いて溶体化温度履歴を操作する方法あるいは溶接部組織を用いることにより、とくに粒界上に微量のδフェライトが分布した組織を作製することを目標として材料組織の調整を図った。これらの材料について高温高圧水中での応力腐食割れ試験を実施して、割れ発生の感受性と粒界組織との関係を評価した。δフェライトにき裂の停留効果があることが確認された。一方、粒界上にδフェライトが広く分布する組織において割れの発生数は増大した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度前半は震災の影響により実験および分析が行えない期間があり計画に遅れが生じたが、年度後半には優先度の高い項目を中心に効率的に研究を進め、遅れをおおむね取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
応力腐食割れ発生プロセス解明については、従来通りの計画で進める。 対策材の提案については、粒界三重点に微量のδフェライトを配置した組織により応力腐食割れの進展遅延を実現する計画で研究を進めている。狙い通りに、粒界上のδフェライトにより応力腐食割れが停留することが確認できたが、一方で、割れの発生数そのものはむしろ増大することが示唆される結果となった。この点を新たに検討したいと考えている。
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