本研究は、蚕を用い抗原を提示させたバキュロウイルスの作製、並び抗原提示ウイルスによるワクチン開発への基盤を構築するものである。多くの哺乳動物に感染し、多額の損害をもたらすネオスポーラ症を本研究の対象とし、ネオスポーラ原虫の抗原をバキュロウイルスの表面に提示させる方法、動物体内で抗原タンパク質を合成させる方法、またこれらの組み合わせによるワクチンとしての機能を検証することを目的とする。今年度は、抗原候補である8種類のタンパク質をBombyx mori ucleopolyhedrovirus(BmNPV)バクミド-カイコ発現系を用いて発現させ、将来のワクチン化への基盤とすることを目指した。8種類の各候補遺伝子はNeospora caninumnのゲノムDNAからPCR法により増幅した。増幅した遺伝子(SRS2、SAG1、DG1、DG2、MIC3、GRA2、MAG1、BAG1)をカイコで発現させるために38シグナルペプチド配列、FLAGタグ配列を付加し、BmNPVバクミドに挿入し発現用組換えバクミド(38-FLAG-HRV3C-各候補遺伝子)を構築した。各組換えバクミドを5齢カイコ幼虫へ注射、7日間の飼育後、発現させたタンパク質を回収しウェスタンブロッティング法により目的タンパク質の発現の確認を行ったところ、8種類のタンパク質のうち、5種類(SRS2、DG1、MIC3、GRA2、BAG1)で発現が確認された。今後、N.caninum感染ウシ血清との反応性を確認し、次年度から解析を行う予定である。
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