研究課題/領域番号 |
22248009
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
朴 龍洙 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (90238246)
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キーワード | カイコ / ワクチン / 抗原提示 / バキュロウイルス / バイオテクノロジー |
研究概要 |
本年度は、前年度発現を終了した8種類の抗原候補タンパク質(SRS2、SAG1、DG1、DG2、MIC3、GRA2、MAG1,BAG1)の抗原性を調べた。陽性血清を用いた酵素結合吸着法(ELISA)により、SRS2、SAG1、及びMIC3は陰性血清に比べ著しく抗原性が高いことが分かった。この3種類の抗原タンパク質をバキュロウイルス表面に提示するための遺伝子を構築した。ポリヘドリンプロモーター下流に分泌シグナルペプチド、抗原遺伝子、FLAGタグ、及びウイルス由来のエンベロープタンパク質GP64遺伝子を含むバクミドを得た。得られたバクミドをカイコに注射し、発現を行い、カイコ体液を回収し、発現確認を行った。抗FLAG抗体及び抗GP64抗体を用いたウエスタンブロットの結果、3種類の抗原タンパク質とGP64の存在が確認できた。しかし、脂肪体からは多量体が確認できたが、体液から分泌されたウイルス粒子には正常にフォールディングされたと考えられる。精製を行った抗原提示ウイルスを透過型免疫電子顕微鏡により観察したところ、バキュロウイルス表面に抗原タンパク質の提示が確認できた。次年度抗原提示バキュロウイルスの抗原性を調べ、解析を予定している。 一方、ウイルス様粒子に提示するためにRous sarcoma virus (RSV)のgroup antigen protein (gag)の粒子の作製が終了し、抗原タンパク質発現用バクミドと共発現を予定している。 本研究で抗原性を示す抗原タンパク質を用いたネオスポラ症診断法を開発した。SRS2、SAG1、及びGRA2をELISA表面に固定し、陽性血清と反応させたところ、既存のキットより応答性が高いことが明らかであった。この診断法で100以上の牛の血清を調べて陽性、陰性の診断ができたので、本診断法を更に改良し、小型・迅速で簡便なキットの開発を継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
抗原候補タンパク質の発現・精製を終了し、抗原タンパク質を用いた新規ネオスポラ症診断キットを開発した。更に、抗原性を示す抗原タンパク質をバキュロウイルス表面提示が完成し、これらを電子顕微鏡で確認済であるので、計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の研究については、動物を用いたワクチン化の可能性、得られた知見から迅速な診断法の開発、動物体内での遺伝子発現の可能な系の構築を予定している。抗原提示バキュロウイルスの抗原性について動物実験により検証し、解析を行う。さらにバキュロウイルス以外にウイルス様粒子(Virus-like Particle)の表面に抗原を提示し、前者と比較検討を行い、ワクチンとしての方向性を打ち出す。一方、ファージ提示法を用いて抗原性を示す抗原タンパク質の新規抗体を獲得し、フラグメント抗体を作製することで、迅速なネオスポラ診断法を開発する。また、免疫誘導能を強化するために動物体内で抗原を発現させるシステムを構築する。
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