研究課題/領域番号 |
22320009
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
大庭 健 専修大学, 文学部, 教授 (00129917)
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研究分担者 |
野家 啓一 東北大学, 文学研究科, 教授 (40103220)
桑原 直己 筑波大学, 人文社会科学研究科, 教授 (20178156)
坂井 昭宏 桜美林大学, 人文学系, 教授 (20092059)
気多 雅子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20201478)
本間 直樹 大阪大学, コミュニケーションデザインセンター, 准教授 (90303990)
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キーワード | 哲学 / 倫理学 / 自然主義(自然化) / 哲学教育 / クリティカル・シンキング / 規範性 / 主体性(agency) |
研究概要 |
「哲学的思考の特質」という論題は、現代における哲学のアイデンティティ・存在理由にかかわる問題であるが、これに対する現代の哲学のスタンスには、いわゆる「哲学の自然化」の評価をめぐって、深刻な対立があることが改めて鮮明になってきた。すなわち、1.一方では、「自然化」をかつての統一科学運動の延長上で、哲学を科学へ解消する動きと見て、むしろそれと対峙する哲学を志向する立場があり、2.他方では、そうした反発を、アプリオリに妥当する第一哲学を復権させようとする保守的な反応だとして、むしろ「自然化」に棹さす立場があり、3.当初の認識論・知識論の領域をこえて、行為論や意味論等、諸種の問題領域で対立しており、4.対立軸のひとつは、規範および規範にたいして態度をとる主体の存立のとらえかたにもある。 したがって「哲学的教育のあり方」についてもまた、育むべき「哲学的思考」のとらえ方におうじて力点の置き方は異なってくるはずが、目下の調査からすると、事態はそれ以前であるように見える。本年度に行ったアンケート調査・全国諸大学のシラバス分析は、目下、鋭意解析中であるが、1.まず大学教育においては、網羅的な概論と、特定の哲学者ないし学派に焦点をあわせたテキスト読解とを軸とする哲学教育が継承されているかたわら、2.高校での「倫理」は、専門的に担当できる教員の採用がないために先細りが続いており、3.初等教育での実験的な試みにおいては「クリティカル・シンキング」一般との差異化についての共通理解がむずかしい、という状況にある。ただし、これはデータの解析が完了していない段階での概括であって、もっとキメ細かい分析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
哲学の「自然化」が対立を生んでいる諸領域をカバーするには予想以上の困難があり、また各種調査の解析に思ったよりも手間取ってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
1.従来あまり顧みられてこなかった行為論・意味論における「自然化」による新たな対立に焦点をあわせて研究を行い、自然化をめぐる問題状況を俯瞰的にまとめる 2.各種調査の解析を完成させ、現行の教育・新たな試みの、それぞれの問題点を鮮明にする。 3.大学において望まれる哲学教育の基本構想を提言する
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