2005年以降の国士舘大学によるテル・タバン遺跡(シリア北東部)発掘調査で出土した約480点の楔形文字文書を研究し、前2千年紀のタバトゥム/タベトゥ市(現テル・タバン遺跡)とその周辺の歴史と文化を解明することが本研究の目的である。文書断片の保存修復をへて、文書研究を進めた結果、(1)同市は、前18世紀後半、ユーフラテス中流域の王権(テルカ市あるいはその近郊)の政治的影響を強く受け、前15-14世紀からは「マリの地の王」を名乗る在地の王朝が統治したこと、また(2)同市は、周辺の強力な国家の動向に政治的に対応しながら、ローカルな文化を一定の水準で維持していたことが明らかになった。
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