研究課題
平成22年度の研究計画は四点に整理していたが、そのうち、次の点で成果があった。1. 重点地域の選定に、開明派のリーダーシップが認められる地域(高知など)、新政反対一揆で学校打ち壊しなどの事態が発生している地域(三重など)、「就学告諭」を発していなかったとされている地域(鹿児島など)、その他をあげ、分担して調査に入った。重点地域の調査結果で特筆すべき成果は、従来は発見されていなかった「就学告諭」が、鹿児島と熊本の両県で発見されたことである。これによって従来の定説は再検討を要することとなった。2. 予備調査として、いくつかの地域に入ることにしていた。研究分担者は、富山、滋賀、京都、長崎、和歌山等に調査入りして調査を進めたが、特に滋賀では大量の学制期の資料を見出すことができた。滋賀県には、自治体史としての滋賀県教育史が存在せず、分担者の宮坂朋幸が論文として発表したことにより、明治初年の教育政策と民衆との教育交渉の重要な一端を明らかにすることができた。和歌山でも、新たな就学告諭が発見された。このほかに、学制に関する国際比較の研究に成果があった。3. 学制の諸外国への紹介のされ方の検討を進めるとともに、諸外国の学制との比較を行った。前者では、英語圏における学制の紹介の様々な記事を検討した論文を、竹中暉雄が発表した。また後者では、研究協力者の一人(長谷部圭彦)が、研究会で日本とオスマン帝国の学制改革の比較を行うとともに、それ以外の諸地域も検討の俎上にのぼせ、世界を大づかみにとらえた類型的把握を提示した。
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桃山学院大学人間科学
巻: 第40号 ページ: 269-322
びわこ学院大学研究紀要
巻: 第2号 ページ: 37-55
東洋文化
巻: 91 ページ: 243-261