研究概要 |
前年度に引き続いて、位数2の自己同型をもつEnriques曲面を研究したが、ルート不変量としてE7型格子をもつEnriques曲面に関して二つの進展があった。高次偏極K3曲面を含む他の計画については、今年度は進展がなかった。 (イ) E7型Enriques曲面の定義方程式を調べた。その結果、モジュラー不変量を用いて、K3被覆の標準的楕円fibrationのWeierstarass標準型を書き下せることがわかった。さらに面白いことに使われるモジュラー形式(4個)は保型形式環の生成系になっている。これは格子E8+UやE7+UをPicard格子に含むK3曲面に対する同様の結果(猪瀬、Klingher-Doran, Kumar)のEnriques類似になっている。結果は城崎シンポジューム報告集にまとめた。 (ロ) E7型Enriques曲面のモジュライの佐武コンパクト化が井草の4次超曲面と同型であることを発見した。昨年度には2次曲線の線形網を使ってモジュライを構成し、それが3次超曲面からのある有理写像の像になることまでは解っていた。計算を続行することによって、有名な井草4次超曲面と同定することができた。また、その事実の容易な証明も見つけた。できれば、部分的にでも、米国Georgia大学での研究集会の報告集に載せるべく準備中である。 (ハ) E7型の成功に刺激されて、D6型やE6型のEnriques曲面に対しても同様のことが成立するかどうかを調べた。
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