研究概要 |
上野(1976年),堀川(1978年),Barth-Peters(1983年),向井・浪川(1984年)等の諸研究を引継ぎ、Enriques曲面の自己同型でもってその有理係数コホモロジー群に自明に作用するものを研究してきた。それを発展させてEnriques曲面の対合でそのコホモロジー群に鏡映で作用するものも同様の分類ができることがわかったが,これらの研究の過程において,Enriques曲面のルート不変量の重要さが浮かび上がって来た。これはNikulinが有限自己同型Enriques曲面を調べるのに用いたものであるが,捩れコホモロジーを用いてより厳密に定式化することによって,Enriques曲面の自己同型に関する別の問題にも応用できることが分ってきた。 平成23年度は,大橋久範氏と共同で,Enriques曲面にMathieu型のsemi-symplectic作用をもつ有限群を分類した。また,Nikulin・金銅による有限自己同型Enriques曲面の分類の発展として,自己同型群がalmost abelianなEnriques曲面を分類した。どちらの研究もEnriques曲面のルート不変量の厳密な定式化が鍵である。 高次数偏極K3曲面については,2年前に得た種数16のK3曲面のモジュライの単有理性について,その論文を公開した(数理解析研究所プレプリント#1743)。また,自己同型に関する大橋久範氏との共同研究においては,Enriques自身の発見した6次曲面表示の重要性を再認識することが出来た。特に,Hutchinson-Gopel型のEnriques曲面の6次曲面表示と自己同型による特徴付けをFilelds研究所の報告集に共著論文として執筆した。
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