研究課題/領域番号 |
22360215
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
増田 貴則 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20293897)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ノンポイント汚染 |
研究概要 |
本研究は,GISによる水・汚濁物質移動解析モデルを発展させることにより,流域の農業地域において流出水(ノンポイント汚染)に対する各種の対策手段の水質保全効果を詳細かつ容易に評価するシステムを開発することを目的としている.具体的には,トポロジーデータモデル型のGISを用いることで容易にデータ取得と利用を行う技術を開発するとともに,地図情報の空間精度や水路内の水量・水質データや農作業等の現場データの反映させ方が評価結果に与える影響を明らかにすることを目標としている.平成24年度は以下の作業や検討を実施した. 1.鳥取県東部の千代川の支流域をモデルの適用対象地域とし,空間精度の劣る簡易な地図情報を用いた場合の解析方法を検討するとともに,その再現精度は詳細データより劣ることが確認できた.流出水の評価結果に与える影響として結果を整理することが課題である. 2.これまでの観測結果に基づき,農地管理や農作業時期による流出水の水質特性を整理し,農作業時期別の現場データの取り方等が流出負荷量や水質の推定結果に与える影響について検討を行った.結果,データ採取頻度により負荷総量に数倍の差が生じることが示された.代かき田植え時期や中干し時期なで農作業の影響を受け排水濃度が高くなる時期に集中的な現場データ採取を行うべきことを示唆するものである.また,農地管理の状態によって,流出負荷量の大きな農地が存在することが整理できた.地図情報の空間精度のみならず属性情報の整備精度が評価結果に大きな影響を与えることが示唆される. 3.流出水対策の効果を負荷量削減程度でみるのではなく下流受水域の水質改善効果で判断するために,生態系消長を組み込んだ受水域生態系水質モデルを組み込むための作業,検討を行った.受水域の水質,生物量などを測定し,生物現存量の消長の整理を行い,モデルパラメータ決定,受水域モデルの再現確認を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現場データ採取間隔の影響,農地管理状態の影響,また,地図情報の空間精度による流量,水質の再現精度の確認など概ね順調に進展している部分もあるが,それらを受水域水質生態系への影響として評価する部分が遅れている.データの採取,モデルのチューニングに手間取ったことが理由である. 成果の一部を論文および学会発表原稿としてとりまとめ,現在投稿中(査読修正中)である.成果の公表,普及の点についてもやや遅れ気味と判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度ではあるが,データを充実させるために地点を絞った水質データ採取は継続する.また,構築したモデルの適用,すなわち,ノンポイント汚染の評価を通じて本研究で開発した手法が流出水対策の立案に対して有効かつ効率的であることを示す.具体的には以下の研究実施を計画している. ①GISモデルの若干の改良:詳細水路だけでなく簡易なデータに対して解析する方法を検討してきたが,再現精度の面で問題が残っているため,その改善方法を検討していく. ②現場観測:過年度の観測の結果,モデルの精度向上やパラメータ調整のために水質調査を行うべきと判断した地点に対して,水質の継続的な観測を行い,モデルの精緻化をはかる. ③モデル検証:簡易セットの入力データを利用した場合,先に述べたように再現精度に問題が残る可能性がある.モデルの改良を試行しその再現精度を確認する.具体的には,作成した方法論を流域データに適用しその動作の確認を行う.過去の実績値や観測値を当てはめ,排水量,排水路の水質が再現できているかをチェックする.これらを通じてデータ精度による再現性への影響の評価を行う. ④受水域生態系水質モデルとの接続:昨年度,受水域水質モデルとの接続をある程度の精度で実施するところまでができたので,本年度は本モデルにより計算される受水域の水質改善効果をもって,流域ノンポイント汚染対策を評価する.このとき,流域の情報レベルによって受水域水質評価への影響を明らかにすることも目標にする.
|