本研究は,GISによる水・汚濁物質移動解析モデルを発展させることにより,流域の農業地域において流出水(ノンポイント汚染)に対する各種の対策手段の水質保全効果を詳細かつ容易に評価するシステムの開発を目的としている.具体的には,GIS上で稼働するモデルをトポロジーデータモデルに適用するよう構築することで容易にデータ取得と利用を行う技術を開発するとともに,地図情報の空間精度や水路内の水量・水質データや農作業等の現場データの反映させ方が評価結果に与える影響を明らかにすることが目標である.平成25年度は以下の検討を実施した. 1.観測結果に基づき降雨時や農作業時期別の現場データの取り方が流出負荷量の推定結果に与える影響についてモンテカルロ法を用いて再検討を行った.結果,1回/日と1回/2週のデータ採取頻度では,耕作期の負荷総量に9倍程度の差が生じる項目があることが示された. 2.地図情報として新たなデータソース(流路等)の適用を試みるとともに,GISモデルをこれまで検討してきた千代川流域以外の流域に適用し,水量・水質の再現性の確認を行った.新たなデータソース,その他流域においても再現性は示されたが,あらためてその再現性はデータの質と量および空間配置に依存することが示され,モデルの適用限界を示すことができた. 3.昨年度に引き続き,流出水対策の効果を負荷量削減程度だけでなく下流受水域の水質改善効果で判断するための検討を行った.文献値や調査結果に基づき受水域生態系水質モデルの構成とパラメータの再検討を行うことで,各流入負荷量段階での再現性を示す適用範囲の広いモデルを得ることができた. 4.流入水対策を模し,受水域モデルへの流入負荷量を変動させたシミュレーションを実施した.一部条件で大きな水質変化があり,概ねは負荷量変動に応じた水質変動が見られたため,流域の情報や負荷評価の精度が無視できないと考えられた.
|