研究概要 |
本研究は,建築物や部材の劣化や健全度を判断するために,実際の建築物において,計測の制約にとらわれない技術として,MEMS等の無線技術を用いる手法について検討を行っている。この技術開発では,建築物,建築部材の健全度を簡便に計測・モニタリングする「耐久性診断・評価システム」の基盤を構築することを目的として,下記6項目の検討を実施している。 項目I.点検・モニタリングに関する現状技術の整理。項目II.情報保管技術の提案。 項目III.点検・モニタリング技術の抽出・開発。項目IV.点検・モニタリングデータの活用方策の提案。 項目V.補修・改修・補強効果の確認技術の提案。項目VI.無線技術活用型診断システムの基盤構築 平成22年度は上記の研究項目のうち,主として項目II~項目IVに取り組んだ。項目IIに関する研究では,情報保管技術に関し,ICタグ(RFID)を活用する方法について実験検討を行った。特にコンクリート部材に埋め込んで長期にわたって情報を保管し,維持管理に役立たせるための検討を行い,本技術の実用化の見通しを得ることができた。研究項目IIIでは,研究協力者と共同で「MEMS無線加速度センサー」および「MEMS無線微動計」を作製し,建築物の維持管理の合理化に役立つセンサーシステムを構築して,実用化のための現場実験を多数実施した。更に,研究の核となる項目IIIおよびIVを実施するために,各種不具合の進展を模擬できる大型試験体(RC造部材,木造部材)を作製した。この試験体や現実の構造物に適用する点検・モニタリング技術として,「無線濡れ感知センサー」および「無線変位計測システム」を試作し次年度以降の実験研究の基盤を構築することができた。すなわち,「雨漏り・漏水」,「床鳴り」,「振動・揺れ」の不具合に対して,計測・診断システム構築のための基盤を構築した。
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