研究課題/領域番号 |
22370041
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 栄樹 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (00294132)
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キーワード | 核外輸送因子 / tRNA / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
tRNAは、蛋白質合成工場であるリボソーム上で、mRNAを蛋白質に翻訳するために必須の分子である。真核生物では、核で遺伝子から前駆体tRNAとして転写され、転写後、5'及び3'末端の延長配列が除去され、3'末端にCCA塩基配列の付加が起こり、tRNAとなる。tRNAは、核膜に存在する核膜孔を通って、核から蛋白質合成の場である細胞質へと輸送される。核膜を介した核-細胞質間物質輸送では、輸送因子importinβファミリー分子が積荷分子を認識し、輸送制御因子GTP結合蛋白質Ranが輸送の制御を行っている。tRNAの核外輸送において、積荷分子であるtRNAを認識するimportinβファミリー分子の一つに、exportin-5がある。tRNAは、tRNA/exportin-5/RanGTPの複合体を形成して細胞質に運ばれる。本研究では、tRNA/exportin-5/RanGTP複合体の立体構造を決定し、tRNAの生合成過程で重要な核外輸送の仕組みについて明らかにする。本年度は、まず、exportin-5の高純度精製方法を確立した。以前までのexportin-5の精製では、2状態が存在していたが、塩の濃度を制御しゲル濾過を通すことにより、均質なexportin-5を精製することに成功した。また、ゲル濾過と電気泳動によって、tRNA/exportin-5/RanGTP 3者複合体が得られていることを確認した。複合体の収量を上げるために、tRNAの合成方法を改善し、大量に合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
tRNA/exportin-5/RanGTP複合体を精製することができたが、結晶化条件の探索を行うのに十分な収量が得られていない。Exp-5/RanGTPのtRNAへの結合能力がpre-microRNAより弱いのは予測していたが、tRNAとExp-5/RanGTPの割合で、複合体形成に影響が出ることは予測していなかった。しかし、確実に3者複合体は得られており、結晶化について試みている。また、大量に安定なtRNAを合成するにも確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
効率よく安定な複合体が得られるtRNAとExp-5/RanGTPの割合を探索する。ゲル濾過で、粗精製RanGTPの持込だと考えられる核酸が確認されており、持込の核酸が複合体の形成効率を下げている可能性もあるので、RanGTPの精製についても検討を重ねる。精製できた複合体については、結晶化を進め、構造解析を行う。得られた構造からtRNAの核外輸送の仕組みについて理解を深める。
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