tRNAは、蛋白質合成工場であるリボソーム上で、mRNAを蛋白質に翻訳するために必須の分子である。真核生物では、核で遺伝子からtRNAとして転写され、核膜に存在する核膜孔を通って、核から蛋白質合成の場である細胞質へと輸送される。核膜を介した核-細胞質間物質輸送では、輸送因子importinβファミリー分子が積荷分子を認識し、輸送制御因子GTP結合蛋白質Ranが輸送の制御を行っている。tRNAの核外輸送において、積荷分子であるtRNAを認識するimportinβファミリー分子の一つに、exportin-5がある。tRNAは、tRNA/exportin-5/RanGTP複合体を形成して細胞質に運ばれる。本研究では、exportin-5複合体の立体構造を決定し、tRNAの生合成過程で重要な核外輸送の仕組みについて明らかにする。本年度は、RanGTPの精製方法を検討し、3者複合体の形成効率を向上させ、結晶構造解析を行った。 粗精製のRanには持込の核酸量が多く、核酸が複合体形成を阻害していると考え、核酸を除去するためにRan精製時に陰イオン交換カラムに通す工程を導入した。Ran精製標品から核酸を除去することにより、複合体の形成効率が7~8倍に増え、同じ精製標品を用いて多く結晶化条件の探索が可能になった。2000条件以上の結晶化条件を探索した結果、複合体の結晶を得ることに成功した。また、exportin-5単体、exportin-5/RanGTP複合体の結晶構造を明らかにした。これらの構造解析の結果から、exportin-5はRanGTPが結合することにより、20番目のheat repeat ヘリックスが15A近く動き、コンパクトな構造に変化した。このことから、RanGTPがexportin-5に結合することで、RNAを捕捉する形を形成することを明らかにした。
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