研究課題/領域番号 |
22370053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田嶋 正二 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (50132931)
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研究分担者 |
中川 敦史 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (20188890)
末武 勲 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (80304054)
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キーワード | DNAメチル化 / DNAメチルトランスフェラーゼ / Dnmt1 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
脊椎動物ゲノムのCpG配列中のシトシン塩基は、しばしばメチル化修飾を受けている。シトシン塩基のメチル化は、遺伝情報発現に抑制的に働く"エピジェネティクス"要因の一つであり、DNAのメチル化による遺伝情報制御は発生・分化に欠くことができない重要な役割を果たしている。メチル化模様は複製の過程で次世代の細胞に正確に伝えられる。この世代を超えたメチル化模様の伝達にはDnmt1と呼ばれるDNAメチル化酵素の一つが責任酵素として働いている。本研究計画ではDnmt1について、ヘミメチル化(片鎖だけがメチル化された)DNAを認識する機構と、生体内でメチル化模様の維持に必須な因子であるNp95(別名Uhrf1)との共役について、構造生物学的、生化学的に明らかにすることを目指す。 昨年度は、Dnmt1のN末端290アミノ酸残基を欠く大きな断片(291-1620)のX線結晶構造を解き、報告した。得られた立体構造から、メチル基供与基質であるAdoMetが触媒中心に結合すると、DNA結合非依存的に、DNAが結合すると予想される位置方向に触媒中心のシステインの側鎖が向くことを明らかにした。これは細菌の酵素で報告されているような、DNA結合に依存的なシステイン残基の構造変化とは大きく異なる。また、驚いたことに、Dnmt1を複製フォークにガイドするN末領域が、ヘミメチル化DNAが結合する触媒ポケットに嵌まり込んでいて、そのままでは基質DNAが触媒中心にアクセスできない配置となっていた。活性を発現するためには、このN末領域を触媒ポケットから排除する必要がある。この領域は触媒領域とは4本の水素結合で固定されていた。 以上得られた結果は、複製フォークでDnmt1がどのようにして標的のDNAをメチル化するのかについて、新知見を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dnmt1のX線結晶構造解析に成功し、DNAメチル化維持機構の一端を明らかにすることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、複製フォークでヘミメチル化DNAがどのようにしてNp95/Uhrf1から受け渡されるのかについて明らかにすることを目指す。また、その際、触媒ポケットを覆っているDnmt1のN末領域がどのような構造変化をして、ヘミメチル化DNAを結合できるようになるのかを明らかにする。X線結晶構造解析に成功したものはN末端が欠けたものであったので、全長型のX線結晶構造解析を目指す。
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