H22年度においては、1980年代以降今日に至る主たる税制改革立法を対象として、大統領府、財務省をはじめとした行政機関、及び連邦議会の各種一次資料の収集を、オンラインデータベース及び現地にて収集し、とりわけ1980年代と1990年代のそれらの区別を対象として、その分析にあたった。同時に、アメリカの租税論、予算論研究者に対して、近年の所得税制改革の意思決定過程上の特徴とその具体的プロセスについてヒアリング調査を実施した。 これらの資料の分析とヒアリング調査の結果、第1に、政策決定過程の側面における歳出入一体化という側面においては、予算編成過程・税制改革立法の決定過程において、その一環をなすリコンシリェーションの位置づけの変質が重要であることが明らかとなった。また第2に、租税構想の側面における歳出入一体化においては、1980年代以降の税制改革立法のトレンドを考察する上で、アメリカ経済の構造変化が税制改革の政策アクターの志向に少なからず影響を与えていることが明らかとなった。それゆえ、上記2点について、先行的に研究を進め、前者を「アメリカ連邦予算過程における財政規律の弛緩とリコンシリェーションの変容」として、後者を「現代アメリカ連邦所得税改革の理念と現実」として、それぞれ論文として取りまとめた。これらは、政策決定、租税構造双方の歳出入一体化を規定する諸要素の一端を明らかにしたという意義を有するとともに、本研究総体を完成させるための中間的成果として位置づけられるものである。 上記の中間的成果と現地調査は、H23年度において計画している本格的な現地調査と、政策決定過程、租税構想、双方の側面における歳出入一体化の実態把握のための土台を形成したという点で重要であった。
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