研究課題
本年度はイギリスを訪問し、基本的な発注方法の枠組み、特に政権交代後どのような体制が取られているのかを精査した。具体的には、政府側、政府系団体、専門家職能団、民間企業での実地調査を元に、公共建築発注の実態と背景にある建築関連法規、専門職能団体の位置づけなどを調査した。主な成果は、(1)規定法:The Architect Act 1997に基づきArchitects Registration Board, ARBに登録した者だけが、Architectの称号を独占的に使用するなど、運用の詳細は職能団体の自律的な管理に期待。(2)公共建築発注:明確な決まりはないが、RIBA のPlan of Workを参照。新版(2013)を策定中で、①入札段階の簡略化、②サステナビリティチェックとBIMワークフローの付加、③計画とプログラミングの充実、④竣工後FMのための情報利用要求、⑤新しいGatewayや他のワークフローとの連動の設定などが盛り込まれている。(3)設計競技:公共発注全体に占める割合は6% で、フランスやドイツに比べれば非常に低いが、設計の質を確保する意味で重要な手法と考えられ、RIBA Competitionによる公共発注者サポートも充実。公共建築発注において、フランスやドイツは合理的な規制を、イギリスは柔軟性のあるガイダンスを好むなど、文化的な違いが明確になった。イギリスの方法を可能にしているのが、強力な職能団体を介した強い自制である。また、こうした自由度の高い発注体制は、複雑で実践的な発注手法を多く創出しているが、有効に機能させるために、発注支援組織は短スパンで組織替えされ、ガイドラインも頻繁に修正され、最新の経済状況や政策に柔軟に対応できる体制が取られている。これらは、交渉をベースとするコモン・ローのメリットを活用したもので、安易な導入の難しさを物語っている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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日本建築学会大会梗概集
巻: F-1 ページ: 205-206
巻: F-1 ページ: 35-36