従来から提案していた、手続き型言語のモジュールを結合するための静的な機構であるタップについて、C言語を対象として実装を行った。また、ソフトウェア開発に適用を試み、評価を行った。その結果、提案していた通りの機能が実現できていることを確認した。しかし、静的な機構としたための制約によって、実際のソフトウェア開発に適用する上での難点が存在することが明らかとなった。具体例をあげると、タッチセンサ付き液晶ディスプレイを制御する組込みシステムを対象に行った開発実験において、スクリーン上のボタン領域の数を動的に変更するアプリケーション開発に、静的なタップでは十分に対応ができなかった。なお、この実装の詳細は京都産業大学論集にて公開している。この結果から、静的な機構を用いたバインド方式には限界があることが判明したため、動的に利用可能な機構を新たに提案するに至った。この機構をcovalと呼ぶ。covalは共有可能な変数とコールバック関数を組み合わせた構造体として実装される。同じ型の変数を持つcoval同士はバインド操作によってそれらの値を共有することができる。あるモジュールが共有変数の値を変更した際には、登録しておいたコールバック関数が起動され、他のモジュールを活性化することができる。また、バインドしないcovalは通常の変数と同じように扱うことができるため、複数のモジュールを連携させる際に、バインド操作以外のコード記述を低減させることが可能である。このような機能を持つcovalをC言語上で実装し、パソコン、およびOSの存在しない組込みシステム環境において動作することを確認した。coval機構の概要と使用例に関しては、情報処理学会ソフトウェア工学研究会にて公表している。
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