本邦で健康食品として普及しているキダチアロエを摂食すると、大腸で微量のアロエエモジン(AE)が産生される可能性がある。このAEは生理活性が強くin vitroでは抗がん作用が多数報告されているが、in vivo実験の報告は少ない。 そこで初年度(平成22年度)はデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発マウス潰瘍性大腸炎モデルを用いて低用量AEの影響を調べたが、大腸炎の抑制作用も促進作用も見出されなかった。平成23年度は家族性大腸腺腫症モデルのApc遺伝子変異Minマウスを用いて、腸ポリープに及ぼす低用量AE投与の影響を調べた。その結果、5 ppm AE混餌の12週間投与で大腸腫瘍数で有意な抑制効果を見出した(小腸腫瘍は抑制効果なし)。 平成24年度は前年度からの研究として、DSS誘発炎症刺激によるMinマウス大腸発がんに及ぼすAEの影響を調べた。実験は10週齢雌Minマウスに最初の1週間DSS混水を与え、同時に対照群に基礎飼料、実験群にはAE混餌(5 ppm、50 ppm)を5週間自由に与えた。その結果、大腸腫瘍数は基礎食群に対して、5 ppm AE群で54%、50 ppm AE群で60%(p<0.05)減少する成績を得た(小腸腫瘍は抑制効果なし)。 さらにAEの類似物質であるエモジン(EM)について、Minマウスポリープ形成に対する影響を調べた。実験群は基礎飼料群、75 ppm EM混餌投与群、150 ppm EM混餌投与群を作成し12週間実施した。その結果、大腸腫瘍数は75 ppm AE群で31%、150 ppm AE群で29%(p<0.05)の抑制効果が見られた(小腸腫瘍は抑制効果なし)。 これらの実験成績を踏まえて、平成25年度から「炎症を背景としたマウス大腸発がんモデルに対するキダチアロエ低分子成分の修飾作用」(科研費・基盤(C)採択)を検討する。
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