研究概要 |
研究実績の概要 今年度は昨年度の成果「教材の分析と授業理論」をさらに深化させるために資料収集及び教材分析,そして,弘前市内の小学校での教授実験を行いその結果を分析した。教材の分析では,これまで扱ってこなかった図形領域について教材の分析を行い,合同な図形の敷き詰め活動について「活用する力の育成」の視点から教材化を考えた。合同な図形の敷き詰めについては,平行線の存在に気付かせ,平行線を作ることを活用して敷き詰めを行う活動の可能性を明らかにできた。また,対称な形の学習にも「活用する力の育成」をはかることができる素材として転用できることも明らかにできた。こうした成果は,論文としてまとめ,学会でも発表を行った。 授業理論については,問題の解決はそれぞれの子どもに任せ,それぞれの子どもの解決の結果を学級全体で省察させながら既習事項や原理が活用されていることを教師が示唆することが重要であることは,昨年度から明らかになってはいた。その一方で,活用されていることの価値を授業者である教師自身が把握していないと,子どもの発言を適切に評価し価値付けることができず,したがって,子どもに原理や既習事項が算数の問題解決に活かされていることを認識させることが出来ないということが教授実験から明らかになった。小学校の教諭は必ずしも算数を得意科目としているわけではないので,このような結果は今後の研究を進める上で重要な視点を与えることとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度は概ね順調である。理由としては,授業理論が概ね出来上がったこと,数と計算領域に加えて,図形領域の敷き詰め活動の教材についても「既習事項を活用する力の育成」についての可能性が明らかになったこと,来年度の教授実験の場として,東京都墨田区の小学校,青森県弘前市の小学校を確保することができたことがあげられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は,これまでの2年間の研究の成果を基に,十数回の教授実験を行い,その記録の分析を通して算数科授業改善への提言をまとめる。その際,実際に授業を行う教員に教材の意味,既習事項を活用する力の育成のための理論をいかに理解させるかが重要な事項として考えられる。そこで,実験前の打ち合わせ,そして,実験後の省察活動を充実させ,小学校教員にこれまでの研究成果を周知徹底させるようにするといった方策をたてた。
|