本年度の研究実施計画は、植物核移行シグナル(NLS)に対応した高精度NLS予測プログラム(cNLS Mapper II)の開発であった。研究代表者らによって開発されたNLS予測プログラム(cNLS Mapper)は、酵母に至適化されたNLSプロファイルを基に開発されたため、植物由来のNLSをより精度高く予測するためには、植物に至適化されたNLSプロファイルを作製する必要があった。Importin α/β経路を介したNLSには、植物特異的なclass 5を含め、計6クラスのNLSが存在する。酵母のNLSプロファイル作製に用いられた変異NLSは、酵母、植物、ほ乳動物で共通して使用できるpTUE-GFP3ベクターにクローン化されているため、これらのプラスミドクローンをタバコ培養細胞に導入し、GUS-GFP-NLSの一過的発現による細胞内局在性を観察した。また、植物特異的なclass 5 NLSについては、新たにNLS変異体を作製し、細胞内局在性解析を行った。GFPの核移行度(核局在度とその細胞の割合)を基にNLSの活性を10段階に定量化し、各NLSクラスについて植物特異的なNLS活性プロファイルを作製した。これらプロファイルをcNLS Mapperに組み込み、NLS予測精度を評価したところ、各NLSクラスで90%以上の予測精度を達成し、酵母NLSプロファイルを用いた予測よりも植物由来NLSを高精度で予測することができた。また、この予測精度は、酵母NLS同様、既存のNLS予測プログラム(PredictNLS、PSORTII、NLStradamus)のいずれの予測精度を凌駕していた。次年度は、核外移行シグナルについての予測プログラムを作製し、最終的にcNLS Mapper IIと統合したプログラムの完成を目指す予定である。
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