研究課題
核外移行シグナル(NES)を高精度に予測するためのプログラム作成に必要な体系的アミノ酸置換解析によるNESプロファイリングを進めた。NESは大まかに3つのクラスに分類され、それぞれのクラスについて核外移行活性に基づいたプロファイルを作製した。具体的には、各NESクラスの代表的NES配列を鋳型として、各位置のアミノ酸を他のアミノ酸にランダムに置換するための2本鎖オリゴヌクレオチド(ある1箇所のアミノ酸位置においてNNSをコードするDNA)を合成し(NES鋳型配列が10アミノ酸からなる場合、10本の2本鎖合成DNA)、NES活性測定のためのGFP発現ベクターに挿入した。変異を導入した位置で鋳型配列とは異なるアミノ酸に置換されたNESクローンを大腸菌から調製した48-60のプラスミドクローンからシークエンシングによりスクリーニングし、各アミノ酸位置で13-19の異なるアミノ酸を持つクローンを得た。得られたプラスミドクローンをマウス培養細胞に導入し、一過的に発現されたGFP-NES融合タンパク質の核外移行度を10段階に区分して表記することにより、鋳型NES配列の各位置での単一アミノ酸置換により変化する核外移行活性を表すNESプロファイルを各NESクラスについて作成した。また、平成23年度繰り越し分の計画によって、クラス-1aとクラス-3が重複した新たなクラスのプロファイルの作成も行った。本クラスのプロファイルを加える(あるいはクラス-1aとクラス-3のプロファイルを置き換える)ことによって、ValidNES等のCRM1-dependent NESデータベースに含まれるほとんどのNESを網羅するNES予測プロブラム作成のための準備が整った。
3: やや遅れている
核外移行シグナルのプロファイルの作製は昨年度で終了させる計画であったが、本研究を実施する過程で、新たなクラスのNESについてプロファイルを作製する必要が生じたため、平成24年度(7月まで)に繰り越しとなり、昨年度の達成度はやや遅れる結果となった。
作成した核外移行シグナル(NES)の活性プロファイルを基に、NLS予測と同様のアルゴリズムを用いてぺプチド配列のNES活性を計算するプログラムを作成する。NESはNLSと異なり疎水性に富むため、膜局在ドメインに擬陽性NESを含む率が高くなる。このため、タンパク質の膜局在化ドメインや非構造領域を予測する既存ツールを組み合わせて予測を行うことにより、より精度高くNESを予測するプログラムの開発を進める。予測精度の評価を進めるとともに、以前研究代表者らによって作成したNLS予測プログラム(cNLS Mapper)と統合させたNLS-NES統合予測システムを開発する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Nature Biotechnology
巻: 30 ページ: 174-178
10.1038/nbt.2095