研究概要 |
『マヌ法典』は人間の行動動機に欲望充足への欲求があることを正当と認めつつも,個人の行動を社会慣習,法典,さらに天啓書ヴェーダという,個人を超えた規範により規制した。その註釈家たちは,仏教などの異端宗教の社会的影響を排するため,聖典解釈学者クマーリラの強い影響のもとに,個人の行動が法典に,また法典の規範がヴェーダに如何に規制されるかを説いたが,同時に,クマーリラよりもリベラルな立場で,現実社会の有識者が,将来『マヌ法典』と同等の権威を認められるような法典を作りうるという可能性をも認めた。
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