研究課題/領域番号 |
22520117
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研究機関 | 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館 |
研究代表者 |
渡辺 晋輔 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 主任研究員 (50332143)
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研究分担者 |
幸福 輝 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 上席主任研究員 (00150045)
陣岡 めぐみ 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 主任研究員 (50409702)
保井 亜弓 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 教授 (30275086)
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キーワード | 美術史 / 版画 |
研究概要 |
本年度は前年に引き続き、各自が研究を進めた。一次史料リストを拡充したほか、収集した一次史料および収集のために参照した二次文献の読解をもとにして研究を進めた結果、形となって表われたものもある。 イタリア版画史を担当する渡辺は、16世紀の版画に関する一次史料の分析に版画・素描・油彩の作品分析を加えることにより、16世紀末の画家アンニバレ・カラッチと版画の関係をまとめ、美術史学会例会で発表した。発表した研究はいずれ論文の形にまとめる予定である。この研究では、アンニバレ・カラッチという初期バロック美術を代表する画家と版画の関係を具体的な証拠をもとに指摘することに成功し、当時において版画がイメージソースとして果たした役割の大きさを証明することができた。また、この時代を代表する作品の図像源を特定したことも重要な成果と言える。 フランス版画史を担当する陳岡は、調査の成果を展覧会「ユベール・ロベール-時間の庭」のカタログに反映させた。この展覧会は我が国において18世紀フランスのユベール・ロベールという画家を紹介した初めての機会であり、カタログの学術的意義は極めて高い。特に、ロベールと版画家リシャール・ド・サン・ノンの関係に新たな光をあてることができた。具体的には、ロベールらの協力を得て、南イタリアの名所や古代遺跡の最新情報を多数の版画で紹介した、サン・ノンの重要な出版物の制作経緯や意義を詳らかにするとともに、サン・ノンの複製版画についてロベール作品との関係における重要性を指摘した。ここではさらに、18世紀の庭園デザインの領域と版画制作の関わりに言及することができたことも特筆できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各自の研究が進み、成果もいくつか出ている。順調といえるのではないか。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果に、さらにデータを蓄積してよりよいリストを作成する。それらは報告書のなかにまとめる予定である。また、各自がこれまでの研究をもとにして論文を執筆し、それらも報告書に含める予定だ。特に渡辺は、来年3月に開幕する「ラファエロ展」の担当でもあるので、そのカタログのエッセイや作品解説のなかでこれまでの研究成果を用いることになるだろう。
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