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2010 年度 実績報告書

18世紀ドイツにおける文学の公共性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22520315
研究機関大阪大学

研究代表者

津田 保夫  大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (20236897)

キーワード公共性 / ドイツ文学 / ドイツ文化史
研究概要

平成22年度は、まず公共性の概念の吟味検討を行い、公共性概念を形成する様々な要因を分析して、その中からとくに、ドイツ語のOffentlichkeitの語義にある不特定多数の人々に対して開かれているという「公開性」と、共通の関心として共有されているという「共有性」の二つの項目を、文学の公共性にとって有効な性質として抽出した。つぎに、18世紀ドイツにおける感情の公共性の問題について考察し、ハーバーマスの「文芸的公共圏」の概念が主として理性的討議に基づけられているのに対して、当時の文学が感情のメディアとしての機能を持ち、感情の公共性とでも言えるようなものを創り出していた状況を調査した。アダム・スミスは「道徳感情論』において感情を道徳の基礎に置き、他者の感情への同感を社会秩序の基盤としたが、このようなスコットランド啓蒙主義の道徳哲学の影響はドイツにも認めることができる。具体的な事例としては、感傷主義(Empfindsamkeit)の文学においては、それまで私秘的なものとされてきた感情が公に表出されるようになり、またシュトゥルム・ウント・ドラングの文学においては感情の解放がモットーとされた。それらの伝達のメディアとしては道徳週刊誌や文芸雑誌、また劇場などが重要な機能を果たしている。とくに劇場は「道徳的機関」(シラー)としての役割をもち、他者への共感としての「同情」を観客に引き起こすことが演劇の重要な目的として論じられた。このような共感による感情の共有は、感情の公共圏とでもいえるようなものを成立させ、それは当時の社会秩序の維持にとって何らかの重要な役割を果たしていたと考えられる。しかし、そのような感情の動員の機能を持つことによって、文学は大衆の行動を操作する装置となる危険性をも孕んでおり、感情の公共性にはそのような両義的な性質も含まれているのである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] シラーにおける魂の不死の問題2011

    • 著者名/発表者名
      津田保夫
    • 雑誌名

      言語文化研究

      巻: 37(印刷中) ページ: 77-97

    • 査読あり

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公開日: 2012-07-19  

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