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2012 年度 実績報告書

18世紀ドイツにおける文学の公共性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22520315
研究機関大阪大学

研究代表者

津田 保夫  大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (20236897)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワードドイツ文学 / ドイツ文化史 / 公共性
研究概要

平成24年度は、とくに叙情詩と文学理論の分野を中心に、18世紀ドイツにおける文学の公共性の成立過程とその特徴について、実際の作家たちの活動状況と作品の特質を分析および考察するとともに、文学の制度的側面との関連についても検討した。
叙情詩の分野では、ゲッティンゲン森林詩社の詩人たちの活動を一つの代表的事例として、結社の成立過程と各詩人たちの交流の実態およびその機関誌としての『ゲッティンゲン詩神年鑑』の刊行状況を調査し、先行する文芸雑誌『ブレーメン寄与』と比較検討するとともに、彼らの詩作品におけるモティーフの分析などを行った。その結果、ゲッティンゲン森林詩社の詩人サークルにおいては、やや閉鎖的で狭い範囲ではあるが、公共圏と呼びうるような性質のものが文学を媒介として形成されていたことがわかった。そこでは相互の自由な意見交換を通して、啓蒙主義的な理性に対する自然の重視やクロップシュトック崇拝といった理念の共有と友情という感情に基づく公共圏が形成されていたのであり、またその形成と維持にとって『詩神年鑑』という文芸雑誌が、制度的側面において重要な機能を果たしていたことがわかった。
文学理論の分野では、ホッブズやロック、ルソーらの社会契約論と、ハチスンやヒューム、アダム・スミスらのスコットランド啓蒙主義における道徳感情論との関連において、シラーの共同体論を考察した。初期シラーはファーガソンを通してスコットランド啓蒙主義の影響を大きく受け、道徳感情を基盤として、神を中心に愛の原理によって結びついた精神の共同体を構想したが、カント哲学研究とフランス革命を経た後期シラーは、調和的な美の原理による自律的な個人の調和に基づく美的国家の理想を提示した。そのような美的公共圏形成の具体的手段として実行されたのが、『ホーレン』のような文芸雑誌の刊行や劇作品の創作および上演だったのである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していた主要な調査研究のうち、公共性に関する諸言説の考察と検討はほぼ完了し、文学の制度・理論・実践・受容に関する全般的な調査もおおむね終了している。ジャンル別の事例研究も、あといくつか事例を追加したいところだが、それぞれ一つずつは実施済みである。全体として、これまでのところ調査研究自体は予定通りに進捗しており、とくに理性的討議よりも感情の共有を主体とする公共性が文学を媒体として形成されていたという仮説を実証する結果はおおむね得られており、また文芸雑誌などの文学的制度がそのための重要な役割を果たしていたことも明らかになりつつある。

今後の研究の推進方策

平成25年度は最終年度となるが、文学ジャンル別の事例研究はさらにいくつかの事例を追加して補充的調査を行いたい。また、制度的側面の調査に関しては、とくに文芸雑誌に関しては十分に仮説を支持するような結果が得られているものの、演劇や劇場に関してはやや不足しているため、追加的に調査を行いたい。その上で、これまでに行ってきた理論と実践と制度に関する調査結果を相互に関連させながら、総合的に調査と考察を行っていく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] シラーにおける歴史と物語2012

    • 著者名/発表者名
      津田保夫
    • 雑誌名

      言語文化共同研究プロジェクト2011 「文化」の解読(12)文化と歴史/物語

      巻: 11 ページ: 13-22

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公開日: 2014-07-24  

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