1.無盡山地蔵寺の伝存文献調査 無盡山地蔵寺は、近世徳島における真言宗の中核的な寺院であり、僧侶教育機関として、常に徳島の真言宗僧侶をリードしてきた寺院であると考えられる。当寺には、近世代初期から近代初期にわたる膨大な量の聖教・典籍が伝存されているが、国史学・美術史にかかわる古文書・絵画資料のほかは、本格的な調査が行われず、手つかずの状態である。近世真言宗僧侶の修学実態解明のために、本研究による伝存文献全体の調査研究は、重要な価値を有している。 平成26年度は、およそ週2日のペースで調査を実施した。当初計画では、所蔵文献の50%の調査を終えることを目指したが、大量の聖教類の調書作成に時間を費やし、約40%の文献についての調査を終えるに止まった。本調査と平行して、「無盡山地蔵寺所蔵文献目録」作成のために、学生アルバイトの支援を受けながら、データ入力を行った。 2.国伝山地蔵寺所蔵文献の追加調査と、「国伝山宝珠院地蔵寺所蔵文献目録〔索引〕」の作成 平成26年秋、国伝山地蔵寺所蔵文献の追加調査を実施し、新出の文献について調書を作成した。また同時に「国伝山宝珠院地蔵寺所蔵文献目録」上冊・下冊の補訂を行うとともに、所蔵文献索引・人名索引・寺社名索引を作成し、「国伝山宝珠院地蔵寺所蔵文献目録〔索引〕」(全210頁)を印刷刊行した(私家版、平成27年3月)。さらに、国伝山地蔵寺伝存の印信類や伝法灌頂受者名録を資料として、伝法灌頂の開壇年時・道場の所在地・大阿闍梨の所属などを分析することを通して、僧侶教育のための教育機関として、国伝山地蔵寺がどのように発展し、自立していったのか、その位置づけを行い発表した(「国伝山地蔵寺における「伝法灌頂」について」鳴門教育大学研究紀要第30卷、平成27年3月)。
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