技術者として活躍する留学生に必要とされる日本語をエンジニア・ジャパニーズとし、日本企業に就職した留学生、留学生を受け入れた企業、留学生を送り出した日本語教育現場への面接およびアンケート調査を元に、エンジニア・ジャパニーズ教材を開発するのが本研究の目的である。工学部・工学研究科を卒業した留学生が、国際通用性を有する技術者として日本企業で活躍するためには、どのような日本語力を身に付ける必要があるのか。大学として、そのためにどのような教育を行なう必要があるのか。現在、多くのビジネス日本語に関する教科書類が出版されており、今後もますます増えることが予想される。その一方で、日本での就職を目指す工学系留学生のニーズに合った教科書は希である。さらには、工学系留学生が在学中に身に付けるべき日本語、特に就職に役立つ日本語とは何かという問題に対する明確な答えは出ていない。本研究では、予備的な調査から得た知見を元に、より多くの企業へと調査範囲を拡大するとともに、就職した元留学生に対するアンケートおよび面接調査を行う。また、大学の教育現場におけるビジネス日本語教育の現状を客観的に把握し直す。さらに、専門教育の担当教員にも調査範囲を広げ、専門教育の中でどのような日本語指導が行なわれ、それは留学生が身に付けるべき日本語とどのように関係しているか、その実態を把握する。以上により、工学系留学生に必要とされるビジネス日本語(エンジニア・ジャパニーズ)とは何かを確定することで、工学系留学生が国際通用性を有する技術者として日本企業で活躍するために必要な日本語教材を開発することが可能となる。研究初年度にあたる平成22年度は、研究者の所属する大学を卒業し、日本企業に就職した元留学生に聞取り調査を実施し、今後の研究への指針を定める予定であった。事前に考えておいてほしい内容をまとめた聞取り調査表を作成し、日程調整を行った。しかしながら、対象者の勤務先が関東地方であったため、震災の影響で中止となった。平成23年度以降のなるべく早い時期に調査を再開する予定である。
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