研究全体の目的は、数年から十数年後には本格的に到来するであろう機械翻訳の時代における外国語教育について、その理念、目的を含め再検討を行った上で、具体的教育モデルを提示することにある(本研究課題では、日本語母語者による中国語読解行為を対象としている)。平成22年度は、以下の4形態の読解行為の相違を明らかにするために必要な実験の実施とデータの収集を中心に研究を進めた。 (A)機械翻訳のみによるコミュニケーション (B)機械翻訳の不備を中国語知識で補う形でのコミュニケーション (C)中国語能力の不備を機械翻訳で補う形でのコミュニケーション (D)中国語のみによるコミュニケーション 実験は1)中国語既習者2)中国語未習者の被験者グループを対象に、中国語コミュニケーション能力検定(TECC)の読解問題を(1)中国語原文のみ提示(2)中国語原文と機械翻訳文の両提示(3)機械翻訳文のみ提示の三形態で解かせ、各グループ間での正答率等の比較、また正答率の高いグループと低いグループでの正答率等の比較を行った。(2)(3)では既習者、未習者間に正答率の差は見られなかった。正答率の低いグループは機械翻訳に完壁な翻訳を求め、その結果機械翻訳を否定的にとらる傾向があり、正答率の高いグループは機械翻訳に柔軟に対応することによりその機能を生かしていることが分かった。実験の結果は「機械翻訳時代の外国語教育-中国語読解と機械翻訳-」(『学術研究-複合文化学編-』59)で報告した。また、3月に台湾において、市販機械翻訳ソフトの流通、実用に関する現地調査を行った。
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