研究全体の目的は、数年から十数年後には本格的に到来するであろう機械翻訳の時代における外国語教育について、その理念、目的を含め再検討を行った上で、具体的教育モデルを提示することにある(本研究課題では、日本語母語者による中国語読解行為を対象としている)。 平成24年度は、機械翻訳を利用した中国語読解教育の具体的なプログラムの実験とその評価を中心に研究を進めた。プログラムは中国語既習者、中国語未習者の双方を対象としたものであり、(1)機械翻訳の不備を中国語知識で補う形での読解学習、(2)中国語能力の不備を機械翻訳で補う形での読解学習を想定している。また自らが自分自身の機械翻訳を利用した読解プロセスを振り返ることにより、機械翻訳との付き合い方を自発的に考える機会を設けている。いずれもコンピュータ端末で学習するものである。前年度の試験的実施の結果を踏まえ、4月‐7月の期間に、約30名の中国語既習者、中国語未習者を対象に本格的にプログラムを実施し、その学習過程、学習効果について分析を行った。その結果、特に自分自身の機械翻訳を利用した読解プロセスの振り返りが、中国語既修者、中国語未修者を問わず、非常に有効であることが確認できた。 本年度も日本国内外において機械翻訳の本格的普及に向けて大きな動きが続いている。国内での動向調査に加え、3月には台湾において機械翻訳ソフトの実用化と中国語教育に関する現地調査を実施した。
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