研究課題/領域番号 |
22520605
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研究機関 | 桜の聖母短期大学 |
研究代表者 |
千葉 克裕 桜の聖母短期大学, 准教授 (50352547)
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研究分担者 |
吉本 啓 東北大学, 高等教育開発センター, 教授 (50282017)
横山 悟 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20451627)
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キーワード | 第2言語習得 / 語彙処理 / MEG / fMRI / 脳機能画像法 |
研究概要 |
本研究では、初級学習者が第2言語の語彙を第1言語の翻訳を通して理解しているか、上級学習者は翻訳を介さず直接L2を理解しているか、日本人英語学習者の語彙処理過程に対する習熟度の影響についてMEGにより検証した。従来の研究で採用されてきたEEGによる脳波(ERPs)の測定では、脳の外側から電気的信号を計測するためその信号がどこで発信され、脳内のどこを伝わってきているかを特定することが出来ない、つまり空間分解能に劣り、言語の機能局在を観察できないという短所があった。また、fMRIによる研究は高い空間分解能を持つが、血流の変化を捉えるという原理上、時間分解能に大きく欠けるという問題がある。一方、MEGは脳神経細胞群の電気活動により生じる磁場を計測することにより、時間軸情報を保持しつつ、頭蓋など伝達経路の影響を受けずにその信号の発信源を特定することが可能である。つまりMEGによって、EEGの空間分解能とfMRIの時間分解能の二つの問題を同時に解決し、視覚野、運動野、言語野の活動を時間的・空間的に同時に観察することが可能になる。 本研究は、語彙判断課題,意味判断課題,翻訳課題の3つの課題により構成し、30名の被験者を対象に実験を行った。第1段階の解析として、語彙判断課題と意味判断課題の2つの実験における反応時間と、英語理解に関する総合的な習熟度テストであるMinimal English Testとのスコアとの関係性を探った。分析の結果から習熟度が単語理解の処理速度へ与える効果は,意味アクセスに至る前の単語認知処理の段階で影響を与えていると判断され、高習熟度学習者と低習熟度学習者の違いは英単語の文字認知の処理速度の違いであり,いったん単語として認知してしまえば初級学習者でも意味へのアクセス時間は変わらないという事が示唆された。次の段階として頭表上のデータを分析することと、ソースレベルの解析を加えることにより、生物学的により正確な検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りの実験が実施され、十分な妥当性をもつ量のデータ収集ができた。予備的なデータ処理と解析が実施され、先行研究とも整合性のある結果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
MEGによる第2言語処理の研究は、世界的にも黎明期にありそのデータ処理と解析についてはデフォルトのスタンダードが確立されていないため、データ解析方法の確立自体が大きな課題となっている。次年度は、データ解析方法の確定とともに語彙処理時の信号源特定をめざし研究を推進する。
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