第二言語読解力の個人差を説明する構成技能を発達的に特定し読みの習得理論と教育への示唆を得ることを目的とした本研究課題の初年度は、予定通り2つの研究対象に対する研究を並行して行った。その1つである、大学生データの再分析では、まずテスト得点をRasch分析によりlogit scoreに変換し、それを使って、L2言語能力、聴解力、L1読解力をL2読解力の説明変数としたモデルを構造方程式モデリング(SEM)により検証し、構成要素間の相対的重みづけを調べた。また大学生を対象に新たに集めた少人数のデータから、L2言語能力、単語認知力、音読のプロソディの関係について相関に基づいた分析を行った。いずれも、本研究の目的に照らして、データ収集法、分析法を検討し、研究の実行可能性も踏まえて、最終的に扱う読解力の構成素を決定するための基礎的研究となるが、これらの結果を本年度中に学会で発表することができた。次に、中高生を対象にする部分では、学術論文、教科書の調査、専門家からの示唆より、中3・高1・高2の連続する3学年に原則同じテストを実施するという研究デザインを取ることを決定した。読解力の構成素は、語彙力、文法力、聴解力、単語認知力に絞ることとし、単語認知力は反応時間を使う実験的タスクを用いることとした。このうち語彙テストについては、使用予定のものを予備調査として中1~高2を対象に行い、発達を示すよい感触をえた。その他のテストの候補として、レベル分けがされていて、問題数が多く、かつ協力に対して好意的であるG-TELPの使用を検討中であり、担当者と第一回の会談をもった。今後は、テスト問題、実験項目を具体化すること、協力校へ正式な依頼書を提出するため、テスト実施の詳細なスケジュールを作成し、本調査実施への準備を進めることが2年目以降の課題となる。
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