研究課題/領域番号 |
22520616
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山下 淳子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (00220335)
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キーワード | 読解力 / 構成要素 / リスニング / 文法力 / 語彙力 / 単語認知 / SEM / Rasch分析 |
研究概要 |
第二言語読解力の個人差を説明する構成技能を発達的に特定し読みの習得理論と教育への示唆を得ることを目的とした本研究課題の2年目は、まず前年度に行った大学生対象の量的研究の分析をやり直し2つの国際学会(EuroSLA,AAAL)で発表した。この研究では、L2言語知識、聴解力、L1読解力をL2読解力の説明変数としたモデルを構造方程式モデリング(SEM)により検証し、構成要素の相対的重みづけを調べている。結果はL2言語知識とL2聴解力はL2読解力への貢献が大きいが、L1読解力は相対的に貢献が小さいというものであった。その他、大学生を対象にした部分では、昨年度行ったL2言語知識、単語認知力、音読のプロソディの関係について調べた予備調査の結果を出版できた。 次に、中高生を対象にする部分では、昨年度に続いてさらに5回の予備調査を行い、語彙・読解・聴解・文法の4つのテスト、単語認知力測定のための言語刺激についてデータ収集をした。テストについてはRasch分析に基づいて項目の適切性を検討した。加えて文法テストでは、7人の経験ある英語教師の判断による内容分析も行った。単語認知力については、サイトワード、音韻処理、正書法処理を測ることにし、先行研究から項目を選んで紙ベースでテストを行った。それにより正答率を確認し、最終的に使う正答率の高い項目をプールすることができた。以上のような作業の結果、本年度中に読解力、聴解力のテストを作成できたが、その他のテストと単語認知測定用の言語刺激、およびアンケートについては、次年度前半に完成を目指すこととなった。また弱い変数であることは予測できるものの、国際学会等への参加を通して、L1読解力を変数として加えることも検討を飴めた。今後はできるだけ早くすべてのテストを完成し、協力校へ正式な研究依頼書を提出し本調査を開始することが課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に書いた通り、大学生データについては分析を終え、研究協力者塩津敏彦先生との連名で2回の国際学会で発表した。論文執筆までは至らなかったが、予備調査として行った別の大学生対象の研究を大学院生天野修一氏との共著で出版できた。中高生を対象とした部分では概ね計画通り、テスト作成のための予備調査を順調に行うことができ、すべてのテストを完成させるところまでは行かなかったが、2つを完成させ、その他のテストについても完成させるための予備データを集めることができた。また協力校との連絡も欠かさず、予備調査の一部にも参加していただき、次年度の本調査に向けて良い関係を継続することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の計画はまず遅くとも秋までにすべてのテストを完成させること、そして冬か年明けの春に第一回の本調査のデータを取ることである。昨年度執筆までいたらなかった、大学生対象の研究結果も本年度中に執筆の完成を目指す。起こりうる困難点は、本調査のスケジューリングとデータ収集で使う協力校のラボのPCと使用するプログラムの相性であるが、前者については協力校から得られる最大限の協力の範囲内で研究計画を多少変更することにより対応する。後者については本年度の前半にラボでプログラムの動作確認を行い、不都合がある場合にはノートパソコンの持ち込みにより対応する。
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