研究概要 |
本年度は,音声学的な知覚・認識能力を適切に判別するテストを作成するための第1段階として,学習者がリスニングの学習過程において直面している問題を洗い出すことを目的とし,以下の手順で調査を行った。まず,いわゆる同程度のリスニング能力の学習者を抽出するための30問のテスト(英検2・準2・3級の問題から60問を選び実施し,Rasche-Modelに基づき30問を抽出)を作成し,そのテストにおいて同じレベルと判定された上位群(27点)・下位群(12点)各3名の実験協力者を対象に,ディクテーション課題およびインタヴューを行った。ディクテーション課題からは,予想されたとおり,ある程度の傾向(上位群:内容語はほとんど聞き取れている,聞き逃しは機能語に集中している,下位群:音声レベルの聞き間違いが多い,音声変化に対応できていない)は見られたものの,同レベルと判定された学習者であっても,それぞれ異なる特性が見られた。この結果から,本課題の基本的なテーマである,リスニングを構成する音声知覚能力の切り分けというのは重要な意味を持つことが確認された。また,インタヴューによって,学習者のレベルにかかわらず,音声について十分な教育を受けた経験がなく,細かな指導を行うことの意義も最確認された。また,下位群のインタビューからは特に,音声の知覚の自動化が十分に進んでおらす,単純なディクテーション課題で会っても,処理速度が追いついていない可能性も見ることができた。
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