研究課題/領域番号 |
22520690
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山崎 圭 中央大学, 文学部, 教授 (60311164)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 近世史 / 近世・近代移行期 / 地域社会 / 幕府(幕府領) / 直轄県 / 治水 / 地主小作関係 / 村落共同体 |
研究概要 |
今年度は、①山田庄左衛門家文書の調査、②山田家周辺村々の調査、③中之条代官所陣屋元村役人文書の調査、④比較のための地域調査、の4点を中心に研究を進める計画を立てた。以下では、各項ごとに記す。 ①については、今年度は現地での史料収集を行わず、かわりに中野市教委の山田正子氏に千曲川治水について研究報告をしてもらった(於中央大学)。山田氏の地元に密着した長年の研究成果に学ぶことができた。 ②については、中野代官所で郡中取締役を務めた柏原宿問屋中村家文書(長野県立長野図書館蔵)の調査を行い、郡中取締役関係の史料の他に、同家が天保飢饉に際して中之条・御影代官所の手代から飯山・新潟方面での米確保を求められた書状を多数見出し、同家が代官手代と緊密に連絡を取り合いながら奔走したことを知ることができた。判読が困難な書状を現在分析中である。後退する「御救」というイメージが強い中で、代官所の飢饉対応を丁寧に確認することに意義があると考えている。 ③については、中島源雄家・健彦家文書の調査を実施し、多くの史料を撮影した。そこからいくつかの論点を見出しているが、その一つに用水・治水の問題がある。中之条地域は千曲川から用水を引き利用しているが、この地域は松代藩領・上田藩領と境を接していたため、用水をめぐる相論や千曲川の洪水対策等の問題は藩をこえて解決しなければならなかった。両中島家文書には近世後期の関連文書が残されており、境を接する当該村に加えて幕領の郡中代や藩領の大庄屋等が代官所・藩役人も交えて交渉を繰り返していく様子を知ることができた。 ④については、今年は他地域(幕領)での調査を行う余裕はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの史料にめぐまれたため、その収集・整理・分析にかなり時間がかかってしまい、目に見える研究成果として論文等を完成させるまでにはいたらなかった。しかし、研究上重要と思われる論点(「研究実績の概要」に記述)をいくつか史料から発見することができたので、成果はあがっていると考える。 史料の調査・収集という点では、おおむね当初の予定通りに進んでおり、研究の基礎的な条件はかなり整ってきたと言える。中野の山田庄左衛門家・篠田家、中之条の中島源雄家・同健彦家はすべて史料整理・目録作成が終了しており、現在はその中から必要なものを選択して撮影をしている。調査地の関係者と協議も重ねており、史料情報を蓄積している。 今年度は研究協力者に研究報告をしてもらい、史料や地域に関する多くの情報を得たり、意見交換したりすることもできた。研究実績の概要に記した代官手代の書状群のように難解な史料は一つひとつ翻刻を行っているところであり、このような作業を急ぎ進めて、論文の完成・発表をめざしている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り計画に従って研究を進めていく。現段階では当面の研究に必要なある程度の史料は収集できているが、地域に残された史料はそれ以上にたいへん豊富なものがある。この機会にできる限り調査収集を行って、次の研究にもつながるような論点の掘り起こしに努めたい。 来年度は最終年度にあたるので、これまでの成果のまとめを意識しつつ、今後のためにも積極的に地域における史料調査を実施していく予定である。「まとめ」としては、中之条・御影代官所の天保飢饉時の米穀確保の動きに関する論考と、中之条周辺地域の領知関係をこえた千曲川治水をめぐる動きに関する論考をできるだけ早く完成させる。今後のための調査としては、地元関係者の協力を得ながら水害関係史料の所蔵者を見出していくなどしたい。
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