紙に描かれた彩色絵図面類の顔料の劣化は、顔料の変色だけにとどまらず支持体である紙そのものの腐食現象にまで及んでしまうことが確認された。その原因は、顔料に含まれる金属成分である。とくに鉛の成分を含む顔料の黒色化と白色化の現象の違いは、過去の環境による影響が作用すると思われる。また、修復過程でくわえられる水分や、高温高湿の環境下での水分が劣化を促進させていると思われる事象も確認された。金属成分の劣化を抑制するには薬品による抗酸化処理が有効である。しかし、それ以上に劣化判定のシステムや保管環境などの整備と予防措置が必須である。
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