本研究は、自然諸科学の受容と伝播を、中世ヨーロッパの手写本テクストの比較分析により明らかにすることを目的とする。平成22年度は、10世紀から13世紀にかけての自然科学知に関する研究史や資料状況を整理、それらを踏まえて、天体観測儀アストロラーベに関する天文学論稿(平成23年度)、アバクス計算法(平成24年度)、幾何学、算術、代数、視覚/光学などの自然科学文献(平成26年度)を考察対象とした。各テクストの継受を丁寧に追う作業を通して、9世紀から13世紀にかけて環地中海世界に学知の広域ネットワークが形成され、漸次的受容において自然哲学から自然科学へと変容していくプロセスを実証的に跡付けた。
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