過失概念については分厚い研究蓄積がある。しかし、事故当事者の日常感覚の中での過失概念、医療や科学技術の専門家の観点からする過失概念は、法的過失概念とは異なる思考体系を前提としておりズレを孕んで認知的に構成されている。本研究は、産科無過失補償制度の創設やADR整備など制度改革の渦中にある医療事故領域を対象に、不法行為をめぐる基礎概念をめぐって①日常的観念、医学専門的観念、法的観念のナラティヴ構造を実証的調査をベースに解析し、②それらが交錯する交渉過程・訴訟過程で生じている相互変容関係解明し、③これら観念の特質と関連性を海外の状況と比較分析したうえで、④実践的提言をも試みようとしたものである。
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