研究概要 |
本研究は,少年保護事件とならんで,少年事件のもう1つの局面を構成するにもかかわらず,これまであまり関心を引かず,十分な検討がなされてこなかった,少年に対する刑事裁判と刑事処分のあり方について,実務の現状を把握し,かつ,同様な問題についての諸外国の法制度の研究を織り込みつつ,理論的かつ総合的な検討を行うことを目的とするものである。 研究の2年目にあたる今年度は,以下の2点を中心に研究を行った。 第1に,今年度に入り,少年事件における裁判員裁判が,一定数行われるようになったことから,それらの事件について,それに関する文献及びそれを担当した弁護士による口頭の報告等を手懸りに,少年事件の裁判員裁判の実態と,そこで実際に生じている問題点を抽出する作業を行った。それにより,裁判員裁判では,直接主義の下で公開裁判が行われることによる少年のプライバシーの保護という要請以上に,迅速な審理という要請があるため,これまでのように,社会記録を利用した慎重な審理が行いにくく,両当事者が社会記録のうちの必要な部分のみを証拠申請して取調べが行われるという状況が生じていることが明らかになった。 第2に,少年事件をあくまで刑事事件の枠内に位置づけたうえで,そのための特別な規定を設けているドイツとフランスについて,(1)少年事件における手続及び処分の成人事件との差異,(2)特別規定の創設の歴史的経緯,(3)特別規定に関する議論の現状,(4)国民の司法参加と少年事件との関係につき,文献調査を行った。
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