本研究は,家庭裁判所における少年保護事件とならんで,少年事件のもう1つの局面を構成するにもかかわらす,これまであまり関心を引かず,十分な検討がなされてこなかった,少年に対する刑事裁判と刑事処分のあり方について,実務の現状を把握し,かつ,同様な問題についての諸外国の法制度の研究を織り込みつつ,理論的かつ総合的な検討を行うものである。そして,その検討結果に基づき,現在,喫緊の課題となっているいくつかの問題について,実務のあるべき運用を提示するとともに,今後なされるべき法改正についての提案を行うことを目的とする。 最終年度にあたる平成24年度は,平成22年度と平成23年度の2年度にわたって行った,本研究テーマに関する比較法研究及びケース研究を踏まえて,少年事件の刑事裁判のあり方及び少年に対する刑事処分のあり方につき,運用上の指針となるべき内容は何か,そして,いかなる法改正が必要かについて検討を行った。また,それと並行して,平成24年の10月から平成25年の3月まで,少年に対する刑事処分の見直し(無期刑の緩和刑の引き上げ,不定期刑の見直し)を審議対象の一つとした,法制審議会少年法部会に委員として参加する機会を得たことから,そこでの審議も踏まえて,少年に対する不定期刑の在り方についての雑誌論文を執筆した。本研究全体の成果は,その一部を,平成24年5月に公刊した刑事政策の教科書に反映させたが,より詳細な内容を,平成25年中に公刊予定の少年法の教科書の中に取り入れる予定である。
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