研究課題/領域番号 |
22530105
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
保条 成宏 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (80252211)
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キーワード | 医療ネグレクト / 親権 / 一時的制限制度 / 推定的同意 / 小児医療 / 関係障害 / 総合周産期母子医療センター / 倫理コンサルテーション |
研究概要 |
1医療ネグレクト事案への法的対応に関する理論研究として、まず、(1)2011年の民法改正により新設された親権の一時的制限制度について、永水裕子・桃山学院大学法学部准教授と共同して検討を加え、むしろ親権の一部(事案ごとの必要性に応じて個別に特定される一部)についての喪失制度及び一時的制限制度、さらには裁判所が子の医療行為に対して代行同意を行う制度を創設する方が当該事案への対応策としてより有効であることを明らかにした。さらに、(2)刑法解釈論として、ドイツ刑法の「同意原則のドグマ」のもとで子の医療行為に対して親の不同意が事前に絶対的・終局的な遮断効を有するような事態を回避するため、親の代行同意の本質に関して、親権者が独自の資格において子の利益を保護するために医療行為の優越利益性を担保する活動であるとの理解に立ったうえで、本人の利益に相反して代行同意を拒絶した親権者については、この拒絶意思を無効とすることによりいわば担保者の地位から排除し、医師が担保者の空位を埋めて医療行為の優越利益性を自らの裁量において担保しうることを「推定的同意」による理論構成に依拠して明らかにした。 2フィールド調査として、(1)小児医療において医療者-親権者-患者の間に発生する「関係障害」およびこれへの対応の実態を解明するために、久本貴志・福岡教育大学教育学部准教授および高橋直紹弁護士(愛知県弁護士会)とともに総合周産期母子医療センターを訪問し、センター長への聞き取りなどの調査を実施した。さらに、(2)小児医療における関係障害や倫理的ジレンマに対応する病院内活動として、病院倫理委員会と連携した倫理コンサルテーションが近年広まりつつある点に着目し、その実情を明らかにするために関係者への聞き取りを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
小児医療における関係障害や倫理的ジレンマに対応しうるものとして、従来想定してきた病院倫理委員会に加えて、この活動をより実効化するものとして新たに倫理コンサルテーションに着目することができた。
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今後の研究の推進方策 |
小児患者のための権利擁護システムを担いうるものとして、病院倫理委員会に加え、近年これと連動して取り組みが本格化している倫理コンサルテーション活動に着目し、これらを実質的に機能させるための理論について、組織と作用の両面から提示する。その際には、「関係障害」の緩和-解消に向けた環境調整の手法に着目し、ソーシャルワークの理論を導入する。
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