研究概要 |
1,研究課題全体の前提となるテーマとして、1960年の日米安全保障条約改定交渉における沖縄問題の扱いについて実証的な解明を試みた。沖縄問題は佐藤内閣以前から日本政府にとって重要な課題となっていたが、その解明は必ずしも進んでいない。本年の研究では岸内閣期の安保条約改定交渉に焦点を当て、当時の沖縄問題という争点が改憲問題と密接に連関していたことを示そうとした。具体的には、新条約の条約地域に沖縄など平和条約第3条地域を含むかどうか,という課題をめぐって外務省、米国務省、米大使館、国会などの対応を中心とする論文をまとめた。論文名は「日米安全保障条約改定交渉と沖縄ー条約地域をめぐる政党と官僚」である。 2,研究課題の中心的なテーマの一つとして、佐藤内閣期の外務省について、政権初期(1965年-1967年)の対応を中心とする論文をまとめた。この論文では、佐藤内閣発足直後、沖縄返還の方式として、分離返還ではなく全面返還が選択された経緯を解明すべく、主として外務省の非公式な対米折衝、これに対する首相の対応などを論じた。外務省の非公式な対米折衝については、日米政策企画協議(PPC)を中心に考察した。論文名は「佐藤内閣期の外務省と沖縄ー全面返還論の選択をめぐって」である。 3, 研究課題の今後の展開に関連して、関係者インタビューを開始し継続している。渡邉昭夫氏(平和安全保障研究所副所長)に向けて沖縄返還後の日本外交と安全保障についてインタビューを行い、貴重な知見を得た。加えて関連資料も提供して頂くことが出来たので、今後の研究に活用する計画である。
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