研究実績の概要 |
相対利潤最大化アプローチに基づき、Multi-Store Paradoxに関連する研究を行った。Multi-Store Paradoxとは、企業が複数店舗を展開するという現実の世界で普通に見られる現象が、均衡戦略としては現れない(従って理論的にうまく説明できない)ことを指す。この問題に関して、企業が自社の利潤だけでなくライバルの利潤も考慮して行動する相対利潤最大化アプローチを採用すると,このパラドックスを解決できることを明らかにした。更に競争環境でそれぞれの企業が狭い領域に集中立地する現象も、ライバルの店舗の間を狙って出店する戦略もいずれも均衡戦略として導出することに成功した。 また相対利潤アプローチを混合寡占の文脈に応用し、従来の結果とは対照的に、市場市場の競争度と最適民営化政策の関係は企業の費用関数に依存するなど複雑であることを明らかにした。また混合寡占市場における相対利潤最大化アプローチに関して2つの定式化を提案し、それぞれ異なる政策的含意が得られることを明らかにした。 この関連で混合寡占と競争構造の研究も行い、混合寡占市場における均衡競争構造を明らかにし、この研究成果をまとめた論文がResearch in Economicsに掲載された。また自由参入市場を考察することで競争構造を内生化する研究を行い、この成果をまとめた論文がJournal of Economicsに掲載された。 更に非利潤最大化行動の別の定式化として、企業の社会的責任の問題にも取り組んだ。企業の意思決定のタイミングを内生化することによって競争構造を内生化し、企業の目的関数と均衡競争構造の関係を明らかにした。具体的には目的関数の特異性よりも目的関数の非対称性(企業間の差異)が結果に大きく影響することを明らかにした。この成果をまとめた論文がSouthern Economic Journalに掲載された。
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