付和雷同の動的均衡モデルの概要 投資家の相場予想形成過程が付和雷同現象にいたることを動的均衡アプローチに基づきモデル化している。連続時間取引は、そのまま強気の上限あるいは弱気の下限を探る過程となっている。投資家は実際の価格変化額をもとに予想価格の分布を見直す。ある実現値が上限の更新と解釈されたとき、予想の分布が移動する。偶然に上限が続いて更新された場合には、付和雷同が現れる。「株価の急騰は取引高の増加を伴う傾向がある。しかし、急落の場合には取引増加を伴わない」ことが知られている。これを説明可能である。 特色 1. 連続時間の取引では非同質的な予想が継続したまま取引が成立してゆく。このような過程を動的均衡と呼ぶ。このアプローチを株式市場に適用した。2.ケインズは「美人コンテストの勝者をあてるコンテスト」の比喩の中で、相場の読み合いが「模擬投票」を繰り返すかのように段階的に進む可能性を指摘している。しかし、連続取引では「模擬投票」を繰り返す前に誰かが実際に投票してしまうのである。本研究では投資家を投資計画期間に基づき、3つのタイプに分ける。各タイプが「適正」とみなす価格はそれぞれの確率分布に従っている。相場の読み合いは「模擬投票」の繰り返しではなく、投資家が「適正価格」の分布を推定する形をとっている。3. 投資家は逐次「適正価格」を見直す。その時、例えば、強気筋が多ければ、結果として「上値を試す」形となる。取引価格は上昇する。上昇額が閾値を超えれば、「適正価格」の分布は上方にシフトしたものと判断される。これに基づき買い注文が入れば、相互に上昇予想を確認し合う形をとって株価はさらに上昇する。4.見直しの際の強気と弱気の出方は偏りがちであることをコピュラを用いて表す。この偏りは短期投資家の間に付和雷同を引きおこす。 成果の発表:期間内に論文を完成できなかった。6月中の完成と投稿を目指す。
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