(1)現代の政府には市場機能を補完する重要な役割が期待されるが、現実の政府が必ずしもその想定のように機能しない政府の失敗が存在し、現在の政府規模を考慮し失敗の規模も大きいと推測されることを顧慮すると、その原因を探り、問題を解消、本来の機能を政府に遂行させることは重要な課題であり、強く求められるものでもある。本研究は、現実の政策決定・政府行動における問題の調査・検証を基礎とし、公共選択論、プリンシパル-エイジェント理論、契約理論等関連する研究の現実の問題への応用的展開を考え、わが国における政府の失敗問題に適用し、その解明・解決を図る理論とその具体・応用方法を明らかにすることを目的としている。 (2)研究は3年で行う計画で、第1、第2年は、第1に現実の政府の行動・機能がどのように理解され、どのように問題を生じ、またそれが政府構造・諸制度とどのように関係しているかを、資料および実地調査により徹底的に解明・整理すること、第2に、わが国における政策・公共的意思決定、政策執行、それらと政府・財政制度の関わりの問題について、従来の公共選択論、組織論、契約理論、比較制度論等がどのように適用できるか、なぜ十分な解明を与えていないかを検討することを主要な課題としていた。 (3)第2年度は、引き続き資料収集・整理を進め、主要な事例における政府意思決定・政策執行における問題と公共選択論・契約理論等の関連・対応を考察すること等によって、問題およびその発生の態様等の理解についてはさらに理解を深められたと考えられる。これに対し、問題・同発生についての実地調査、および問題を生じる背景・構造等についての理論的・統合的な検証・展開は十分な状況と言えない。したがって本年度(平成24年度)は研究最終年として、資料調査を継続しながら、実地調査および理論の統合的解明および展開を図り、問題の解明および解決方法・方向に関して研究成果を論文として纏める。
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